8 HOTEL~サウナが好きだ/後編
金曜6:00pmタイムカードを打刻して退社。帰路とは逆方向の電車に乗る。
横浜乗換、今は湘南新宿ラインもしくは上野東京ラインと案内される東海道線下りに乗車。たった30分だがグリーン車の2階席左側に座る。それが非日常と言う休暇への誘(いざな)いだ。
30分で檸檬堂ホームランサイズを平らげるけど、実質夕食。
茅ヶ崎下車徒歩5分程度でそこに到着する。
第一印象は大陸横断ハイウェー/ルート66の終点サンタモニカのモーテル。Bed&Breakfastの簡素な宿+α。
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とののえ親方がプロデュースするサウナがあると言うことでやってきた。
ととのえ親方はコラボレーションや持込企画、期間限定や会員制やパーソナルも多くあり取捨択一しているだろうが、統一して『窓』と解放感が特徴だ。
それは吾のイメージするリゾートと一致するのである。温度は真逆だけれど。
バブル時代のユーミンとスキーブーム。吾も香港俳優のレオン=ライ(←当時憧れ/お互いに破綻前)と同じランクル100に乗って毎週の如くスキーに行っていた。
東急や西武などの大手デベロッパーリゾートの大きなピクチャーウインドウを隔てて外気温マイナスの世界と目の前の大きなマントルピース。
背伸びして隣席の人々と深夜、慣れない濃いお酒を舐めていた。
それがリゾートの概念であった。
◇
そんな記憶が一気に甦ってきたんだ、サウナ室で。
『ここ、まぢにリゾートじゃん』
茅ヶ崎だからSoなんだけど、近隣で言えば大磯プリンスホテルや閉店した平塚のグリーンサウナなどメガキャリアとは違う、正に西海岸サンタモニカの雰囲気のサウナであった。
サンタモニカには休暇で数度行った事がある。LAXからは近いのだ。
最後に滞在したのはLAS~LAX~NRTが国内線UAの機材トラブルで遅延してNRT行きに乗れなく、一泊ステイ決定になった時。
旅の相方と共に、旅行代理店の用意した空港内高級ホテルではなくサンタモニカの宿を要求し、クラスは低いですけど?と構わず承知してタクシーを30分飛ばした。
有名モール至近のささやかなモーテルで無料延泊を楽しんだのであるが、そのホテルと似ていたのである。
B&Bのその宿。男ふたりなのでシングル二室を与えられ、街を闊歩。アバクロやホリスターを旅の最後に爆買いし、さざ波が聞こえるレストランでワインを抜栓できないスパニッシュ系の彼女にソムリエナイフのインストラクションをしたりして一夜を楽しんだ。
その時買ったダンガリーシャツやカッターシャツはお互いに今でも愛用している。
発想の転換ができるから楽しく旅ができる友なんだ。帰国便に乗れないと嘆くよりも明日には乗れるから、今夜はエキストラで楽しもうっていう感じがいいじゃん。
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8 HOTELの中庭には大きなプールがある。東京のフィンランド大使館と等価交換した地にかつて存在した建築家黒川紀章氏設計の六本木プリンスホテルを彷彿とさせる。
サウナはあるが水風呂は無い。だからプールなのだろうが、季節柄そこそこ冷えていてそれはそれでいい。
サウナーは水風呂の温度に対してこだわりが強く16℃では満足できずそれ以下を求める方が多い。しかしここはプールであり、閉塞された浴室ではない。サウナ室を出ればホテルの中庭で超開放的な天然風の流れる屋外なのである。
フィンランドのサウナは水風呂が無く、天然の水場(湖沼など)があるだけで外気浴を楽しむのが主流。
ここではサウナ室を出たらレインシャワーを浴びてプールにドボンできるのである。
そしてプールサイドでチル(ひとやすみ)。
レインシャワーも温度が刻々と表示されそれも面白い。
客室には使い捨てスリッパがあるが、レンタルでビーサンがあった。
サウナとプール、考えたけど迷わずレンタルした。水場に使い捨てスリッパは似合わない。
蛇足、ビーサンといえば葉山のげんべい。
今のアパレル系○げ(まるげ)を立ち上げたのは高校の同じ機械科の後輩であるN氏、超カッコいい紳士のラガーマンである。当時のビー部主将は吾と同じクラスの文武両道O氏で、生徒時代の両者は吾はよく知っている。
余談、推薦入学のB部落ちこぼれのY氏はレギュラーになれず苦労人だった。あまり仲良しではないが、機械実習など、ことある事に補助していた。
定期テストで基本科目は約束して出席番号と名前だけ無記名にして時間ぎりぎりに答案用紙を交換したこともあったかなぁ。
早弁・睡眠学習の彼にはノートのコピーも渡したけど……翻って赤点補習常連の吾。もう時効だよね、それはそれで楽しかった甘酸っぱい青春。
○げは京都の一澤帆布のような御家騒動があったかどうかは知らないが、婿養子入りしたN氏はある日突然げんべいから離脱し東京・蔵前で独立した。
∴○げはN氏の創始であるので、彼の手を離れても好きなブランドだ。
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8 HOTELでは宿泊プランで「飲み放題プラン」があった。お酒大好き♪なのでそれを予約。
宿泊中は全てのドリンク飲み放題。もちろんオロポ(オロナミンC+ポカリスエット)も作れるラインナップ。途中外出して駅前コンビニでつまみを調達。
まぁ相当飲んだけどマンボー(まん延防止等重点措置)発出時期なのでプールサイドでの飲酒はNGで客室でということであった。
クラフトビールはいくつかあったけど、これが好きだった。
冷たいシュワシュワするお酒が好きで、客室持込は2本までというのを守り、空き瓶をカウンターに返して追加を持って行く。もちろんビーサンで。
ジェネリックカールを二つ買ってきたけど一袋は余ってしまって、そのまま客室に残すと遺失物に化けるので、チェックアウト時にフロントの若人に「みなさんで休憩時間にどうぞ」と渡した。
でもね、チェックアウトして門を出る時「ご馳走様です。よい一日を!」と声をかけてくれた瞬間、あぁホスピタリティあふれるリゾートだなぁって感じたんだ。
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実はこの滞在は旅の相方には声をかけず単独行であった。
国家資格(医師)を持つ旅の相方には久しくあっていない。吾が567無症状者であるかもしれない不安からだ。
1年前はマスクや頚椎性神経根症を発病した時に鎮痛剤を送ってくれたが、やはり風来坊の吾は距離を置かざるを得ない。
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極論だけどサウナーの配偶者は「サウナなんて」と言う方々は多いと聞く。
この現状が落ち着いたら、ぜひ夫婦水入らずでこのホテルに宿泊してサウナを体感してほしいと思う。
ロウリュし放題だし、水着着用なので。
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翌土曜朝に共に楽しんだサウナ~は2組のアベック(フランス風)だった。
タオルの熱波は無かったのだが、ゆずの柑橘系オイルは爽やかだったよ。
ただ、その時2組のアベック、女性は上下セパレートのビキニ、男性はステテコ丈の水着。
吾は痴女丈の水着(≒ラガーマンの丈)で少し場違いだった。
サウナって全身に熱を浴びて発汗して水風呂に入って「ふぅ~」っていう瞬間が好きなんよ。
こういう施設だとできる限り熱を吸収したいから露出最大限の水着でGoじゃん。フィンランドビレッジではそれがスタンダードだったよ。
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自然発生的マニアックなサウナコミュニティからは距離を置いているが、サウナ大使が心を寄せるととのえ親方のサウナを体感して、ネクストジェネレーションに向かうサウナの方向性を少し思ったのである。
サウナから出てレインシャワー浴びて、バスローブ羽織ってガゼホにあるようなハンモックチェアでCAVAを味わえるのは素敵じゃない?
そしてアメリカンブレックファストではなくホットドッグの朝食。
サウナで発汗した後はガッツリ食べたい。その欲望を叶えてくれる朝食だった。
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最後に解せないのは、ととのえ親方が自らプロデュースしたサウナを自らの評価で賞を与えていること。
基準を知らないし誰がどう評価しているのか不明なので権威あるものかどうかも分からないものなのですが。
とはいえ、閉塞され息が詰まるような日常が続く中でほんの一瞬ですが開放的になれたのです。
やっぱりサウナが好きだ。
週末は何処のサウナに行こうかな。
了